生成りの紙面に濃緑の帯と金の細線をあしらったカバー画像。上に「大石浩之のお寺ノート」、中央に大きな見出しで「納骨堂と樹木葬の違い|静岡は171か所の145が寺の経営」、下段に「ATAWI TEMPLE|磐田市の寺院データベース」と日付「2026.08.25」が並ぶ。

結論

納骨堂と樹木葬、結局どっちが安いんでしょうか

値段より先に、法律上の区分が違います。厚生労働省の令和6年度衛生行政報告例によると、静岡県の納骨堂は171施設、うち145施設・84.8%が宗教法人の経営です。同じ統計に樹木葬の項目はありません。納骨堂は焼骨の収蔵、樹木葬は墓地での埋蔵にあたり、数えられる場所が違うためです。

静岡県の納骨堂は171施設、うち145施設が寺の経営

厚生労働省が2025年(令和7年)10月21日に公表した令和6年度(2024年度)衛生行政報告例によると、2024年度末現在で静岡県内の納骨堂は171施設ある。経営主体の内訳は、宗教法人が145施設で84.8%、地方公共団体が17施設で9.9%。残りは公益社団・財団法人が5施設、その他が4施設である。全国の納骨堂13,853施設のうち宗教法人は10,244施設、73.9%だから、静岡は全国より10.9ポイント高い。

先に断っておく。納骨堂の呼び方も中身も、宗派・寺院・地域でまるで違う。ロッカー式のところもあれば、位牌壇に近い形のところも、機械で厨子が出てくる形のところもある。ここに並べるのは静岡県全体の統計と法律の定義であって、ご自分の菩提寺がどう答えるかを言い当てるものではない。

経営主体静岡県の納骨堂(施設)割合全国の割合
宗教法人14584.8%73.9%
地方公共団体179.9%5.5%
公益社団・財団法人52.9%0.8%
その他42.3%19.7%
合計171100%13,853施設

ここで意外なのは、同じ統計表に「樹木葬」という項目が1つも無いことである。令和6年度衛生行政報告例の第5表が数えているのは、墓地・火葬場・納骨堂の3種類だけだ。静岡県に樹木葬の区画がいくつあるのかは、この表からは分からない。国が数えていないのではない。樹木葬は法律上「墓地」に含まれるため、墓地18,687区域の中に溶けて見えなくなっている。

私は数字を割り戻す癖がある。不動産の仕事では、そうしないと持ち主の負担に翻訳できないからだ。静岡県の墓地は18,687区域、納骨堂は171施設。墓地109区域に対して納骨堂が1施設という比になる。墓地と納骨堂の経営主体の全体像は寺の墓地と市営霊園の違い|静岡は墓地の62%が個人経営にまとめた。

収蔵と埋蔵。違いは「あとで取り出せるか」に出る

墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第2条は、納骨堂を「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設」と定めている。同じ条文で墳墓は「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設」、墓地は「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域」とされている。納骨堂は収蔵、墓地は埋蔵。使われている動詞が違う。

樹木葬は、木や草花を墓標にして焼骨を土に納める形を指す通称で、この法律に「樹木葬」という語は出てこない。焼骨を土に納めれば埋蔵にあたり、第4条が「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」と定めているため、樹木葬は墓地の許可を受けた区域でしか行えない。だから統計では墓地に数えられる。納骨堂は建物の中の棚や厨子に焼骨を納めるので、収蔵にあたる。

この違いは、移したあとの自由度に出る。同法第2条第3項は改葬を「埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すこと」と定義している。条文の建前では、墓から納骨堂へも、納骨堂から別の墓へも移せる。ところが実際に移せるかどうかは、その焼骨が個別に取り出せる状態で納められているかで決まる。

言い切っておく。納骨堂と樹木葬は、費用で比べる前に「あとで取り出せるか」で分かれる。納骨堂でも一定年数の後に合祀へ移す契約なら、その日を境に取り出せなくなる。樹木葬でも骨壺のまま埋蔵する型なら取り出せる。施設の名前ではなく、契約の中身が分かれ目になっている。

磐田市の例が分かりやすい。磐田市公式ウェブサイトによると、駒場4916番地10にある磐田市合葬墓は永代合葬式の墓で、収蔵数は3,000体。ページには「一度収蔵されたご遺骨は、いかなる理由があっても返還ができません」と書かれている。承継も管理も要らない代わりに、取り消せない。この2つは同じ一行の裏表である。

費用は体数と年で割り戻す。磐田の150,000円を物差しにする

磐田市合葬墓の使用料は、ご遺骨1体につき150,000円で、管理料はかからない。申込資格は2通りある。1年以上にわたって磐田市に住民登録があり、収蔵する遺骨を持っている方。もしくは、死亡時点で1年以上磐田市に住民登録のあった方の遺骨を収蔵しようとする方。受付は磐田市環境課である(2026年8月25日確認)。

1体150,000円という立て方は、家族にとって計算しやすい。墓じまいで取り出す遺骨が3体なら450,000円、5体なら750,000円になる。区画いくらではなく体数いくらなので、先に体数を数えておかないと総額が出ない。私が家の相談で最初に確かめるようお願いするのもここである。墓誌に彫られた名前の数と、実際に納められている骨壺の数が一致するとは限らない、と私は考えているからだ。

比べる物差しとして、磐田市の市営霊園も置いておく。使用料は霊園と区画によって170,000円から300,000円、管理料は年2,090円。管理料を月に割ると174円、30年払い続けて62,700円になる。使用料190,000円の区画なら30年で252,700円という桁だ。空き家の年間維持費を出すときと同じやり方で、年と月に割っておくと家族の会話が具体になる。

寺院が経営する納骨堂と樹木葬の費用は、ここには書かない。永代供養料、年ごとの護持会費、開眼と納骨のお布施。いずれも寺ごとに違い、相場として断定できる数字を私は持っていない。相場のつもりで1つの金額を出せば、それより高い寺も安い寺も説明を強いられる。寺と檀家の双方を傷つけるやり方だと考えている。永代供養という言葉そのものの意味は永代供養の基礎資料で確かめられる。

正直に書くと、私はここで迷っている。ATAWI TEMPLE は磐田市内の118か寺を収録している。そのうち醫王寺(御厨地区・真言宗智山派)のように、永代供養墓・樹木葬・納骨堂の取り扱いが記録されている寺はある。ただし出典は民間の紹介サイトで、区画数も費用も未確認のまま置いてある。二次情報を根拠に「ここにあります」と案内していいのか、まだ自分の中で線が引けていない。今は「寺に直接聞いてください」としか言えず、その不便を読者に押しつけている自覚がある。

どちらに移すにも、入口は改葬許可で同じ

納骨堂を選んでも樹木葬を選んでも、墓じまいの手続きの入口は変わらない。墓地、埋葬等に関する法律第5条により、改葬の許可を出すのは現に遺骨がある場所の市町村長である。磐田市の場合は環境課の窓口で、手数料は1件300円。書き方と必要書類は改葬許可申請の出し方|磐田市は1件300円・環境課の窓口に書いた。

同法第14条は、墓地の管理者は改葬許可証などを受理した後でなければ埋蔵をさせてはならない、納骨堂の管理者は火葬許可証または改葬許可証を受理した後でなければ収蔵してはならない、と定めている。移し先が決まっていても、許可証が無ければ受け入れ側は動けない。順序は「移し先の内諾 → 改葬許可 → 納骨」になる。全国の改葬は年176,105件まで増えている。その背景は墓じまいが増えている|改葬17万件を磐田の実感で読むにまとめた。

菩提寺には、費用の話としてではなく段取りの話として3つ聞くのがいい。①この寺に納骨堂か樹木葬の区画があるか、無い場合に他所へ出すことをどう考えるか。②檀家として続けるのか、離れる形になるのか。③今の墓を返すとき、墓石の撤去は誰が手配するのか。お盆やお彼岸の法要のあと、住職に直接その場で聞くのが早い。

移し先の施設には、別の3つを聞く。①個別に安置する期間は何年で、そのあとどうなるか。②合祀に移ったあと、遺骨を取り出せるか。③承継する人がいなくなったとき、料金の請求先と管理はどうなるか。この3つを聞くと、パンフレットの「永代」という言葉が何年を指しているかが分かる。答えを紙でもらうところまでやっておくと、家族に説明しやすい。

今日できる確認は3つ。移し先は今日決めなくていい

納骨堂か樹木葬かを、今日決める必要は無い。墓じまいを決めた家でも、移し先だけが半年動かないことはよくある。それでも今日のうちに終わる確認が3つある。どれも申込書を書かずに済む。

  • 移す遺骨の体数を数える。合葬墓のように1体いくらで積み上がる料金では、体数がそのまま総額になる。数が分からないときは、墓誌の名前ではなく墓の中を開けた人に聞く。
  • 候補の施設が納骨堂の許可なのか、墓地の許可なのかを聞く。樹木葬という商品名だけでは、収蔵と埋蔵のどちらかが分からない。許可の種類は施設側が必ず把握している。
  • 取り出せる期間を年数で聞き取る。「永代」「未来永劫」ではなく、個別安置が何年かを数字で書き留める。この1行が、10年後に家族が判断するときの材料になる。

この3つが埋まると、費用の比較がやっと意味を持つ。逆に言えば、体数も許可の種類も年数も分からないまま金額だけ並べても、比べているようで比べられていない。決断を促すつもりはない。今日の成果は、決めるための材料が1つ増えた状態でいい。

最後に繰り返す。この記事の数字の出どころは3つである。厚生労働省の令和6年度衛生行政報告例、磐田市が公表している合葬墓・市営霊園の条件、墓地、埋葬等に関する法律の条文。寺院が持つ納骨堂と樹木葬の区画の分け方、費用の立て方、承継が絶えたときの扱いは、寺ごとに違う。宗派によっても違う。ご自分の家がどうなるかは、最後は菩提寺に確認していただきたい。改葬の手続きは遺骨のある市町村の窓口へ、相続と登記の個別判断は司法書士へお願いしたい。お墓まわりの記事はお墓の記事一覧にまとめてある。

FAQ

よくある確認

納骨堂と樹木葬は、法律上どこが違いますか。

焼骨の納め方が違います。墓地、埋葬等に関する法律第2条で、納骨堂は焼骨を「収蔵」する施設、墳墓は焼骨を「埋蔵」する施設と定められています。樹木葬は焼骨を土に納めるため埋蔵にあたり、第4条により墓地の許可を受けた区域でしか行えません。区画の条件は寺や施設ごとに違うため、最後は菩提寺にご確認ください。

静岡県には納骨堂がどれくらいありますか。

令和6年度衛生行政報告例によると、2024年度末現在で静岡県内の納骨堂は171施設です。経営主体は宗教法人が145施設で84.8%、地方公共団体が17施設で9.9%、公益社団・財団法人が5施設、その他が4施設。全国の納骨堂13,853施設に占める宗教法人の割合は73.9%で、静岡はそれより10.9ポイント高くなっています。

樹木葬に移したあと、別の場所へ移し直せますか。

納め方によります。墓地、埋葬等に関する法律第2条第3項は、収蔵または埋蔵した焼骨を他の墳墓や納骨堂へ移すことを改葬と定めており、条文上は移せます。ただし合祀して土に還す型では個別に取り出せません。契約前に、個別安置が何年で合祀がいつかを数字で確認してください。

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あわせて読む

Sources

出典・確認先

  1. 参考 e-Stat 令和6年度衛生行政報告例 第5表「墓地・火葬場・納骨堂数,経営主体・都道府県-指定都市-中核市(再掲)別」

    2025年10月21日公表、2024年度末現在。CSVを取得して確認。静岡県の納骨堂171施設(宗教法人145/地方公共団体17/公益社団・財団法人5/その他4)、墓地18,687区域。全国の納骨堂13,853施設(宗教法人10,244/地方公共団体760/公益社団・財団法人115/その他2,734)。表に樹木葬の項目は無い。2026年8月確認

  2. 参考 e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)

    第2条(改葬・墳墓・墓地・納骨堂の定義)、第4条(墓地以外の区域での埋蔵の禁止)、第5条(改葬許可は遺骨の現に存する地の市町村長)、第14条(管理者は許可証の受理後でなければ埋蔵・収蔵をさせられない)を条文で確認。条文に「樹木葬」の語は無い。2026年8月確認

  3. 参考 磐田市公式ウェブサイト「磐田市合葬墓」

    磐田市駒場4916番地10、永代合葬式の墓、収蔵数3,000体、使用料はご遺骨1体につき150,000円で管理料不要、申込資格は1年以上の住民登録と収蔵する遺骨、収蔵後は「いかなる理由があっても返還ができません」、受付は磐田市環境課。2026年8月確認

  4. 参考 磐田市公式ウェブサイト「市営墓地」

    市営霊園の使用料170,000円〜300,000円、管理料年2,090円。2026年8月確認

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と菩提寺にご確認ください。 本記事は一般的な情報であり、特定の寺院・家・土地についての判断ではありません。

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この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。菩提寺や墓の話は、家をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。 その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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