結論
墓じまいのあと、お寺の墓地と市営霊園、どっちに移すのがいいんでしょうか
数の前提が違います。厚生労働省の令和6年度衛生行政報告例によると、静岡県の墓地18,687区域のうち地方公共団体の経営は1,069区域、5.7%です。宗教法人は2,267区域で市町村営の2.1倍あります。磐田市営霊園3,921区画のうち2026年度に先着順で募集が出ているのは44区画、1.1%です。
数の前提を先に置く。静岡県の墓地18,687区域のうち、市町村営は5.7%
厚生労働省が2025年(令和7年)10月21日に公表した令和6年度(2024年度)衛生行政報告例によると、2024年度末現在で静岡県内の墓地は18,687区域ある。このうち地方公共団体が経営しているのは1,069区域、全体の5.7%にとどまる。宗教法人が経営する墓地は2,267区域、12.1%。数の上では、寺などの宗教法人が持つ墓地のほうが市町村営の2.1倍ある。
先に断っておく。墓地の扱いは宗派・寺院・地域でまるで違う。ここに並べるのは静岡県全体の統計と磐田市が公表している条件であって、ご自分の菩提寺がどう答えるかを言い当てるものではない。数の全体像を知ってから菩提寺に聞くと、質問が具体的になる。その順序のための記事だと思って読んでいただきたい。
| 経営主体 | 静岡県の墓地(区域) | 割合 | 全国の割合 |
|---|---|---|---|
| 個人 | 11,640 | 62.3% | 82.4% |
| その他 | 3,697 | 19.8% | 7.4% |
| 宗教法人 | 2,267 | 12.1% | 6.7% |
| 地方公共団体 | 1,069 | 5.7% | 3.4% |
| 公益社団・財団法人 | 14 | 0.1% | 0.0% |
| 合計 | 18,687 | 100% | 876,042区域 |
いちばん多いのは経営主体が個人の墓地で、11,640区域、62.3%を占める。ここが読みどころだと私は考えている。18,687という数字を見ると選択肢が山ほどあるように見えるが、外から申し込んで区画を借りる相手になりうるのは、宗教法人の2,267区域と地方公共団体の1,069区域を足した3,336区域、全体の17.8%である。残りは、家や地域の中で使われてきた墓地だ。
なぜ個人経営がこれだけ残っているのか。厚生省が2000年(平成12年)12月6日付けで出した「墓地経営・管理の指針等について」(生衛発第1764号)は、墓地経営主体は市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい事情があっても宗教法人又は公益法人等に限られる、としている。個人が新しく墓地を開くことは想定されていない。それでも62.3%が個人なのは、墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)の施行前から地域にあった墓地が、数として残っているためだと私は理解している。ただし統計に内訳の説明は無い。ここは未確認のまま置く。
火葬場は32施設すべて市町村営。納骨堂は84.8%が宗教法人
同じ令和6年度衛生行政報告例で、静岡県内の火葬場は32施設あり、経営主体はすべて地方公共団体である。過去1年以内に稼働実績のある「恒常的に使用している火葬場」も32施設で、数が一致する。一方、納骨堂は171施設のうち145施設、84.8%が宗教法人の経営で、地方公共団体は17施設、9.9%しかない。
言い切っておく。静岡では、焼くところは市町村が持ち、納めるところは寺が持っている。火葬は100%が公、納骨堂は84.8%が宗教法人、墓地は宗教法人が市町村の2.1倍。役割がきれいに分かれている。「公営か寺か」という選び方は、実は納骨の側にだけ発生する問いなのだ。納骨堂と樹木葬が法律上どう分かれているかは、納骨堂と樹木葬の違い|静岡は171か所の145が寺の経営に分けて書いた。
この分かれ方は、墓じまいの段取りにそのまま出てくる。改葬許可を出すのは、いま遺骨が埋葬されている墓地のある市町村長で、これは墓地、埋葬等に関する法律第5条に定めがある。ところが遺骨の行き先を決める交渉相手は、多くの場合お寺になる。窓口が2つに割れる。手順の全体像は墓じまいの基礎資料にまとめてある。
申し込める条件が違う。磐田市営霊園は「遺骨がある・1年以上・未使用」
磐田市公式ウェブサイトの「市営墓地」ページ(2026年8月4日更新/2026年8月24日確認)によると、磐田市の市営霊園は緑ケ丘・八王子・福田・竜愛・駒場・池田・富里・加茂西の8か所、合計3,921区画ある。申込資格は3つ。現に納骨するお骨があること、磐田市に1年以上継続して居住し住民登録があること、市営墓地の使用許可を受けていないこと。この3つのどれかを満たさないと、申込書を書く手前で止まる。生前に区画だけ確保しておく、という使い方はできない。
2026年度(令和8年度)に先着順で募集が出ているのは4霊園である。緑ケ丘の2号区が6区画、八王子が22区画、竜愛が15区画、富里が1区画。合わせて44区画になる。福田・池田・加茂西は募集が無い。駒場霊園だけは随時申請を受け付けており、募集区画数は書かれていない。
私は数字を1区画あたりに割り戻す癖がある。不動産の仕事では、そうしないと持ち主の負担や当たる確率に翻訳できないからだ。先着順の44区画は、市営霊園3,921区画の1.1%にあたる。全区画が使用中という前提を置いたざっくりの割り算だが、桁は変わらない。「市営に移す」という選択は、条件を3つとも満たしていても、この1.1%に間に合うかどうかの話になる。募集の有無は年度で変わるので、探し方は磐田市の市営霊園、2026年度は先着順|空き区画の探し方に書いた。
寺院墓地の側には、この「募集」という形が無い。空き区画の一覧が出るわけでも、受付期間が決まっているわけでもない。まず檀家になるかどうかの相談から始まり、宗派、いま檀家かどうか、移す遺骨の数、寺までの距離が順に確かめられる。市営が「条件を満たす→申し込む」なら、寺は「関係を結ぶ→区画の話になる」。順序が逆である。
磐田市にはもう一つ、合葬墓がある。駒場霊園内にあり、収蔵数は3,000体。使用料はご遺骨1体につき150,000円で、管理料はかからない。宗教・宗派を問わず利用でき、墓の承継や管理も不要である。ただし一度収蔵した遺骨は返還できない。申込資格は市営霊園と同じく、1年以上の住民登録と遺骨があることが軸になっている。
費用の見え方が違う。市営は表に出ていて、寺は聞かないと出てこない
磐田市の市営霊園は、使用料が霊園と区画によって170,000円から300,000円、管理料が年2,090円と公表されている。10月1日から3月31日までに使用許可を受けた場合、その年度の管理料は1,045円になる。返還したときは使用料の50%が還付される。金額が全部ページに載っていて、電話をかけなくても総額の見当がつく。
管理料2,090円は、月あたり174円である。30年払い続けて62,700円。使用料が190,000円の霊園なら、30年で合わせて252,700円という桁になる。これは私が勝手に置いた前提での概算だが、空き家の年間維持費を計算するときと同じやり方で、負担を年と月に割り戻しておくと家族の会話が具体になる。
寺院墓地の費用は、ここには書かない。区画の使用料、年ごとの護持会費、入檀にあたってのお布施。いずれも寺ごとに違い、相場として断定できる数字を私は持っていない。相場のつもりで一つの金額を出すと、それより高い寺も安い寺も説明を強いられる。寺と檀家の双方を傷つけるやり方だと考えている。
公表のしかたについて、磐田市の良い点を3つ数えたい。1つめは、使用料・管理料・還付率までを1ページに並べていること。2つめは、申込資格を3行に絞って書いていること。迷う人が最初に確かめたいのはここである。3つめは、合葬墓について宗教・宗派を問わないことと、承継や管理が不要であることを明記していること。継ぐ人がいない家にとって、この2行が判断材料になる。
その上で、一事業者として注文を1つ書いておく。募集区画数は載っているが、次の募集がいつ出るのかと、1年間にどれくらいの区画が返還されているのかが分からない。返還区画数を年に1度、1行載せてもらえると、待つか他を探すかの判断がつく。制度を変える話ではなく、すでに市が持っている数字を1つ出す話である。
菩提寺に聞くときは、費用の話としてではなく段取りの話として3つ聞くのがいい。①この墓地に新しく区画を分けてもらえるか、②檀家として続けるとして年にいくらの護持会費が要るか、③承継する人がいなくなったときにどう扱われるか。電話で切り出しにくければ、お盆やお彼岸の法要のあとに、住職に直接その場で聞くほうが早い。
宗派も先に確かめておきたい。ATAWI TEMPLE が磐田市内で収録している寺院は118か寺で、そのうち曹洞宗が62か寺と半数を超える。臨済宗妙心寺派が21か寺、浄土宗が6か寺、臨済宗方広寺派が6か寺と続く。家の宗派が合う寺は、地図で近い寺とは限らない。檀家という関係そのものの成り立ちは檀家制度の基礎資料で確かめられる。
今日できる確認は3つ。移し先を決めるのは、そのあとでいい
寺と市営のどちらにするかを、今日決める必要は無い。決められない事情がある家のほうが多いことも知っている。それでも、今日のうちに終わる確認が3つある。どれも申込書を書かずに済む。
- いまの墓の名義が誰になっているかを確かめる。市営でも寺院墓地でも、改葬の手続きは名義人が動く前提で組まれている。名義が止まったままだと、移し先を決めても先へ進まない。詰まり方は墓の名義変更をしないとどうなる|2026年の登記義務化と同じ壁に書いた。
- 磐田市に1年以上の住民登録があるかを数える。市営霊園も合葬墓も、この1年が申込資格の入口になっている。実家を出ている長男が申込者になるつもりなら、ここで条件を満たさない場合がある。
- 移す遺骨が何体あるかを数える。合葬墓は1体につき150,000円で、体数がそのまま金額になる。市営霊園の区画に何体納められるかは霊園と区画で違うので、環境課に体数を伝えて聞くのが早い。
私が迷っているのは、合葬墓の「一度収蔵した遺骨は返還できません」という一行をどう受け止めるかである。承継も管理も要らないという利点と、取り消せないという性質は同じ一行の裏表になっている。私はこう考える。この一行だけは、申し込む人ひとりではなく家族全員に読んでもらうほうがいい。ただ、読んでもらった後で何と言い添えるのが正しいのかは、まだ自分の言葉が定まっていない。ここは宿題として残す。
最後に繰り返す。この記事の数字は静岡県全体の統計と、磐田市が公表している市営霊園と合葬墓の条件である。寺院墓地の区画の分け方、費用の立て方、承継が絶えたときの扱いは、寺ごとに違う。宗派によっても違う。ご自分の家がどうなるかは、最後は菩提寺に確認していただきたい。改葬の手続きは遺骨のある市町村の窓口へ、相続と登記の個別判断は司法書士へお願いしたい。お墓まわりの記事はお墓の記事一覧にまとめてある。
FAQ
よくある確認
寺院墓地と公営墓地は、何がいちばん違いますか。
申し込みの入口が違います。公営は申込資格を満たして募集に申し込む形で、磐田市営霊園なら「納骨するお骨がある」「市に1年以上住民登録がある」「市営墓地が未使用」の3つが条件です。寺院墓地には募集という形が無く、檀家として関係を結ぶ相談から始まります。費用の立て方も寺ごとに違うため、最後は菩提寺にご確認ください。
静岡県では、寺の墓地と市営の墓地はどちらが多いですか。
宗教法人が経営する墓地のほうが多くなっています。令和6年度衛生行政報告例によると、静岡県の墓地18,687区域のうち宗教法人の経営は2,267区域で12.1%、地方公共団体の経営は1,069区域で5.7%と、宗教法人が2.1倍あります。最も多いのは経営主体が個人の墓地で、11,640区域、62.3%を占めます。
市営霊園に移したい場合、いつ申し込めますか。
募集が出ている年度に先着順で申し込みます。磐田市では2026年度に緑ケ丘2号区6区画、八王子22区画、竜愛15区画、富里1区画の合計44区画が募集中で、駒場霊園だけは随時申請を受け付けています。福田・池田・加茂西は募集がありません。募集状況は変わるため、磐田市環境課へ直接ご確認ください。
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あわせて読む
Sources
出典・確認先
- 参考 e-Stat 令和6年度衛生行政報告例 第5表「墓地・火葬場・納骨堂数,経営主体・都道府県-指定都市-中核市(再掲)別」
2025年10月21日公表、2024年度末現在。静岡県の墓地18,687区域(個人11,640/その他3,697/宗教法人2,267/地方公共団体1,069/公益社団・財団法人14)、火葬場32施設はすべて地方公共団体、納骨堂171施設のうち宗教法人145。全国は876,042区域。2026年8月確認
- 参考 磐田市公式ウェブサイト「市営墓地」
8霊園3,921区画、申込資格3件、使用料170,000円~300,000円、管理料年2,090円(10月1日~3月31日の許可は1,045円)、返還時50%還付、2026年度の募集44区画と駒場霊園の随時受付。2026年8月4日更新のページを2026年8月確認
- 参考 磐田市公式ウェブサイト「磐田市合葬墓」
駒場霊園内、収蔵数3,000体、使用料はご遺骨1体につき150,000円で管理料不要、宗教・宗派不問、承継や管理は不要、収蔵後の返還不可。2026年8月確認
- 参考 厚生省生活衛生局長通知「墓地経営・管理の指針等について」(平成12年12月6日 生衛発第1764号)
墓地経営主体は市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい事情があっても宗教法人又は公益法人等に限られる旨。2026年8月確認
- 参考 e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)
第5条の改葬許可は、遺骨が埋葬されている墓地の所在地の市町村長が行う旨を条文で確認。2026年8月確認
制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と菩提寺にご確認ください。 本記事は一般的な情報であり、特定の寺院・家・土地についての判断ではありません。