生成りの紙面に濃緑の縦帯と金の細線をあしらったカバー画像。上に「大石浩之のお寺ノート」、中央に大きな見出しで「離檀料に決まりはあるのか|磐田の相談で必ず出る2つの確認」、下段に「ATAWI TEMPLE|磐田市の寺院データベース」と日付「2026.08.25」が並ぶ。

結論

墓じまいをしたいのですが、離檀料は払わないと駄目なんでしょうか

離檀料という費目は、墓地、埋葬等に関する法律にも同法施行規則にも出てきません。改葬許可の要件にも入っていません。ただし申請には、いまの墓地の管理者が作成した埋蔵の事実を証する書面が要り、寺院墓地ではその管理者が菩提寺です。払う払わないを決める前に、使用規則に返還の取り決めがあるか、証明欄にいつ記名押印をもらえるか、の2つを確認してください。

離檀料に法令の定めはない。「規約などの定めもなく請求根拠が不明だ」という相談が公表されている

離檀料という費目は、墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)にも、同法施行規則(昭和23年厚生省令第24号)にも出てこない。改葬許可の要件にも入っていない。ここは条文を読めば確かめられるので、言い切っておく。離檀料は、法令に根拠を持つ費用ではない。

独立行政法人国民生活センターの「墓・葬儀サービス(各種相談の件数や傾向)」を2026年8月25日に確認した。ページは2026年7月31日に更新されている。PIO-NETに登録された「墓」に関する相談件数は、2023年度が1,046件、2024年度が1,018件、2025年度が1,077件である。

同じページの事例欄には、離檀料の相談が2件並んでいる。1件は「遠方の寺院の永代供養墓に納骨している両親の遺骨を近隣の霊園へ移したいが、寺院から高額な離檀料を請求され円滑に進まない」。もう1件は「菩提寺に墓じまいを依頼したところ、高額な離檀料を請求された。支払える金額でない上、規約などの定めもなく請求根拠が不明だ」。

後者の「規約などの定めもなく」という一言が、この記事で言いたいことの半分である。相談した本人が、金額の高さより先に「根拠を書いた紙がない」ことを問題にしている。

ただし「法令に定めがない、だから払わなくていい」とは続かない。手続きの側に、菩提寺が書く書面が1枚挟まっているからである。そこを飛ばして「払わない」と決めても段取りは進まない。だから私は磐田で墓じまいの相談を受けるとき、金額の話に入る前に2つの確認をお願いしている。

先に断っておく。檀家という関係の中身は、宗派でも寺でも地域でも違う。使用規則を紙で配る寺もあれば、代々の口約束だけで続いた寺もある。ここに書けるのは確認の順番であって、ご自分の菩提寺の答えではない。関係の成り立ちは檀家制度とはにまとめてある。

確認1|墓地の使用規則に、返還のときの取り決めが書いてあるか

1つめの確認は、いま借りている墓地に「書面の取り決めがあるかどうか」である。墓地使用許可証、墓地使用規則、護持会の会則、入檀のときに交わした書類。この4つのどれかが家にあるかを探す。あるかないかで、話の進め方が変わる。

比べる相手は磐田市営霊園である。磐田市公式ウェブサイトの「市営墓地」ページを2026年8月25日に確認した(更新日は2026年8月4日)。平成28年(2016年)4月1日から、墓所の移転や使用見込みがないなどの事由で市営霊園の墓地を返還した場合、使用期間に関係なく、使用許可時に納めた使用料の50%が還付される。申請書の一覧には「共葬墓地返還届兼使用料還付請求書」という様式まで置かれている。

金額に直してみる。緑ケ丘霊園2号区の使用料は170,000円なので、返還すると85,000円が戻る。管理料は年2,090円なので、85,000円はおよそ40年分の管理料にあたる。公営墓地では、やめるときにいくら戻るかが様式の名前にまでなっている。

私はこう考える。この対比が、離檀料の話を難しくしている正体である。片方は様式で「返すときの金額」が決まっていて、もう片方は書面が無いところから話し合いが始まる。怖いのは金額そのものではなく、いくらになるか分からないことのほうだと私は受け止めている。なお、寺院墓地で磐田市と同じ水準まで返還時の扱いを書面化している例があるかは、私は確認できていない。ここは未確認として残す。

菩提寺への聞き方は、金額を避けた形でよい。「墓地の使用規則はありますか」「返還するときの決まりが書かれた紙はありますか」。この2つである。無ければ「無い」で構わない。額を決めるのは規則ではなく話し合いだ、という意味になり、それも家族に説明できる材料になる。お布施と檀家の関係の基本は檀家とお布施の基礎知識に整理してある。

確認2|改葬許可申請の証明欄に、いつ記名押印をもらえるか

2つめの確認は、改葬許可申請に添える書面である。墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条第2項第1号は、申請書に「墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面」の添付を義務づけている。寺院墓地なら、この管理者は菩提寺である。磐田市も「現在の墓地の管理者に提出書類の証明欄への記名押印(自署の場合は記名のみで可)をしてもらう必要があります」と案内している。

この第1号には、あまり知られていない括弧書きが付いている。「(これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)」。管理者の証明書面をどうしても用意できないときの道が、国の規則に一応は残されている、ということになる。

ただし、期待のしすぎは禁物である。何が「特別の事情」にあたり、何が「これに準ずる書面」になるのかは規則に書かれていない。決めるのは市町村長である。離檀料の話がこじれたことがこれに当たるとは、条文のどこにも書いていない。この括弧書きは交渉の材料ではなく、磐田市環境課生活環境グループ(市役所西庁舎1階、電話0538-37-2702)に「うちの場合は使えますか」と先に聞く材料として持つ。私はそう案内する。

正直に書くと、私にはまだ読み切れていない箇所がある。同じ施行規則の第5条は、分骨について「墓地等の管理者は、他の墓地等に焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者の請求があつたときは、その焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類を、これに交付しなければならない」と管理者側の交付義務を明記している。ところが改葬については、条文を読んだ限り同じ形の交付義務が見当たらない。分骨にはあって改葬にはない。この差をどう読むのが正しいのか、私はまだ答えを持っていない。

手がかりはある。同規則第7条は、墓地等の管理者に帳簿を備えることを義務づけており、記載事項には墓地使用者等の住所と氏名、埋葬等の年月日、改葬の許可を受けた者の氏名が並ぶ。制度は、寺が記録を持つ前提で組まれている。だから聞くべきは「証明をもらえますか」ではなく、「証明欄に、いつなら記名押印をいただけますか」である。申請書の書き方と手数料は改葬許可申請の出し方|磐田市は1件300円・環境課の窓口に書いた。

数字で桁を見る。墓の相談は年1,077件、全国の改葬は176,105件

高額請求の話は目立つ。先に件数の桁を見ておきたい。国民生活センターのPIO-NETに登録された「墓」の相談は2025年度で1,077件だった。一方、厚生労働省の令和6年度衛生行政報告例によると、全国の改葬件数は176,105件である。

割り戻してみる。1,077件を176,105件で割ると0.6%、およそ160件に1件になる。ただし分母と分子は厳密には対応していない。「墓」の相談には墓地の購入や永代供養の契約も含まれ、改葬に限らない。年度も一致しない(相談は2025年度、改葬は令和6年度=2024年度)。比率ではなく、桁を見るためのざっくりの割り算である。それでも「墓じまいをすればたいてい高額な請求が来る」という前提には立たなくてよい。

国民生活センターの公表のしかたについて、良い点を3つ数えておきたい。1つめは、事例欄に離檀料の相談が相談者の言葉のまま載っていること。「規約などの定めもなく請求根拠が不明だ」という一文が、そのまま確認すべき点を指している。2つめは、「葬儀サービス」の注釈に「葬儀業者が行う葬式のほか、火葬場、斎場、僧侶の依頼等葬式に関連する相談も含みます」と範囲が書かれていること。寺への依頼が相談の対象に入ることが、注釈を読めば分かる。3つめは、2026年6月3日公表の「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」が、消費者へのアドバイスに「葬儀社との打ち合わせは親族や第三者など複数で行いましょう」を挙げていること。葬儀社を想定した助言だが、寺との話し合いにも置き換えられる。

その上で、一事業者として注文を1つ書く。離檀料でもめた相談は、消費生活センターの窓口と、改葬許可を出す市町村の窓口という別々の入口に着地する。どちらも守備範囲の外には踏み込めないので、相談する側は同じ事情を2回説明することになりやすい。改葬の案内ページに「費用の折り合いがつかない場合の相談先は消費者ホットライン188」の1行が加わるだけで、この往復は減る。すでにある案内どうしをつなぐ話である。

今日できる確認は3つ。払うか払わないかは、今日決めなくていい

離檀料を払うか払わないかを今日決める必要はない。決める前に終わる確認が3つある。どれも寺に金額を聞かずにでき、費用もかからない。

  • 家にある紙を探す。墓地使用許可証、墓地使用規則、護持会の会則、入檀のときの書類、管理料の引き落とし記録。見つかれば取り決めがある。見つからなければ「見つからなかった」と紙に書く。それも確認1の答えである。
  • 菩提寺に、証明欄の日付を聞く。改葬許可申請書の証明欄に、いつなら記名押印をもらえるか。金額ではなく日程を聞く。お盆と彼岸の前後は寺が最も立て込むので、日を先に押さえるほど段取りが組める。
  • 実家の売却予定日から逆算する。売る日が決まっているなら、墓と仏壇はその前に片づく必要がある。改葬許可、遺骨の取り出し、移し先の受け入れ。この3つの所要日数を足して、期限を紙に書く。

3つめについて一言。実家の売却で段取りが詰まる原因は、価格ではなく期限であることが多い。買主の融資実行日は動かせないのに、墓と仏壇の予定だけが「そのうち寺に聞く」のまま残る。金額の交渉より日付の確認が先だと私が言うのは、これが理由である。

私がまだ決めかねていることも書いておく。「払わないと決めて臨むほうがいいか」と聞かれるが、私はどちらとも勧めていない。法令に定めが無いのは事実である。同時に、菩提寺との関係は改葬のあとも法要や納骨で続くことがあり、その先まで含めた損得を、私は他人の家について判断できない。私が渡せるのは、確認の順番と、確認して分かった事実までである。

今日の成果は、結論を出すことではなく、決める材料が1つ増えた状態で家族が別れることだと私は考えている。菩提寺への切り出し方は墓じまいの相談、秋彼岸まで1か月で菩提寺に聞く3つに、全体の流れは墓じまいガイドに書いてある。

最後に繰り返す。この記事の数字と条文は、国民生活センター・磐田市・国の法令が公表している内容である。離檀料をいくらと考えるか、いつ証明欄に判をもらえるか、閉眼供養をどうするかは寺ごとに違う。宗派によっても違う。ご自分の家がどうなるかは、最後は菩提寺に確認していただきたい。金額の折り合いがつかないときは消費者ホットライン「188(いやや!)」番へ、改葬許可の手続きは遺骨のある市町村の窓口へ、相続と登記の個別判断は司法書士へお願いしたい。

FAQ

よくある確認

離檀料を払わないと、改葬の許可は下りませんか。

墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条第2項が定める添付書類は、管理者が作成した埋葬等の事実を証する書面、墓地使用者等以外が申請する場合の承諾書、その他市町村長が特に必要と認める書類の3つです。離檀料の領収書は入っていません。ただし1つめの書面を作るのは菩提寺なので、寺との話が止まれば手続きも止まります。

離檀料の相場はいくらですか。

公的機関が相場を公表している資料を、私は見つけられませんでした。宗派でも寺でも地域でも違うため、私も金額は断定しません。国民生活センターの「墓・葬儀サービス」には、支払える金額でないという相談が事例として載っています。目安を探すより、寺に書面の取り決めがあるかを先に確かめるほうが早いと私は考えています。

高額な離檀料を請求されて困ったら、どこに相談できますか。

独立行政法人国民生活センターは、消費者ホットライン「188(いやや!)」番を案内しています。全国共通の3桁の番号で、最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等につながります。改葬許可の手続き自体は遺骨のある市町村が窓口で、磐田市なら環境課生活環境グループ(電話0538-37-2702)です。窓口が分かれる点にご注意ください。

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Sources

出典・確認先

  1. 参考 国民生活センター「墓・葬儀サービス(各種相談の件数や傾向)」

    2026年7月31日更新。PIO-NETに登録された「墓」の相談件数は2023年度1,046件・2024年度1,018件・2025年度1,077件、「葬儀サービス」は2023年度886件・2024年度979件・2025年度1,005件。「最近の事例」に「菩提寺に墓じまいを依頼したところ、高額な離檀料を請求された。支払える金額でない上、規約などの定めもなく請求根拠が不明だ」「遠方の寺院の永代供養墓に納骨している両親の遺骨を近隣の霊園へ移したいが、寺院から高額な離檀料を請求され円滑に進まない」。注釈に「葬儀サービス」は僧侶の依頼等葬式に関連する相談も含む旨。2026年8月確認

  2. 参考 国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル−「家族葬だから安い」と思っていませんか?−」

    2026年6月3日公表。葬儀サービス相談の年度別件数(2019年度632件〜2025年度917件)と「高価格・料金」に関する相談割合(2019年度33.2%→2025年度52.6%)、令和6年の死亡数は約161万人で調査開始以来最多、消費者へのアドバイス「葬儀社との打ち合わせは親族や第三者など複数で行いましょう」「見積書は必ず受領し、内容(明細)をよく確認しましょう」、消費者ホットライン188。2026年8月確認

  3. 参考 e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」(昭和23年厚生省令第24号)

    第2条第2項第1号「墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)」、同項第2号の承諾書、同項第3号、第5条の分骨に係る管理者の交付義務、第7条の帳簿の備付け義務と記載事項を条文で確認。2026年8月確認

  4. 参考 e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)

    第5条第1項の改葬は市町村長の許可を受ける旨。条文に離檀料に相当する費目の定めが無いことを確認。2026年8月確認

  5. 参考 磐田市公式ウェブサイト「市営墓地」

    平成28年4月1日から市営霊園の墓地を返還した場合は使用期間に関係なく使用料の50%を還付、様式「共葬墓地返還届兼使用料還付請求書」、緑ケ丘霊園2号区の使用料170,000円・管理料年2,090円、改葬は移し先を決定してからの手続きで管理者の証明欄への記名押印が必要、手数料1件300円、窓口は環境水道部環境課生活環境グループ(市役所西庁舎1階・電話0538-37-2702)。2026年8月4日更新のページを2026年8月確認

  6. 参考 e-Stat 令和6年度衛生行政報告例 第4章 生活衛生 第6表(埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数)

    2025年10月21日公表。令和6年度の全国の改葬件数176,105件。2026年8月確認

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と菩提寺にご確認ください。 本記事は一般的な情報であり、特定の寺院・家・土地についての判断ではありません。

大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)の顔写真

この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。菩提寺や墓の話は、家をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。 その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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