初秋の自然光が入る無人の和室で、家財整理用の箱を背景に、木の机へ実家の鍵、間取り図、二冊の無記名ファイル、空欄の予定表を二列に並べ、遠景の無銘墓石とともに墓じまいと実家売却の並行作業を表した写真調の生成画像。
記事内容をもとに生成したイメージです。実在の場所・人物を撮影したものではありません。

結論

墓じまいと実家売却、どちらを先に進めればいいですか。

どちらかを終えてからもう一方ではありません。最初の確認は同時に行い、実行は期限が先に来る作業からです。実家は名義・売却時期・引渡条件、墓は使用者・遺骨数・移転先・菩提寺の日程を別々に確かめます。売却日だけ先に固めると、法要や改葬が間に合わない場合があります。作法と費用は最後は菩提寺に確認を。

墓じまいと実家売却の答えは「確認は同時、実行は期限順」

墓じまいと実家売却は、どちらかを先に終えるのではない。宗派・寺院・墓地の管理規則・地域で扱いが違うため、最初の確認は同時に行う。実行は、売却の引渡日、改葬先の受入日、菩提寺の法要日など、動かしにくい期限が先に来る作業から進める。

親の死後、磐田の実家が空き家になり、墓は県外にあるとする。家だけ先に売れば、墓地使用許可証や寺からの封筒を家財と一緒に処分しかねない。墓だけ先に動かせば、仏壇や位牌の扱いが決まらず、遠方への往復が増える。二つは別の手続だが、書類を探す人と家族会議の顔ぶれは重なりやすい。

ここで「同時に確認する」と「同時に契約する」を混同しないでほしい。実家の査定を取り、登記事項証明書を確かめても、直ちに売買契約を結ぶ必要はない。墓地管理者へ必要書類を聞いても、直ちに改葬先を決める必要はない。情報を集める段階では、どちらの結論も保留できる。

私が案内する判断基準では、家側を先に実行するのは、買主との引渡日が決まり、墓は当面管理を続けられると確認できた場合である。墓側を先に実行するのは、墓地の返還日、移転先の受入日、菩提寺と相談した法要日が決まり、家は査定や書類確認の段階にある場合だ。家の名義も墓地使用者も分からない段階では、先後を決める材料がまだ足りない。

家と墓の窓口が別になる理由は、相続登記と墓の承継を二列に分けた記事で整理した。家は土地・建物の名義から始まる。墓は墓地台帳の使用者、祭祀を担う人、管理規則から始まる。一つの「相続」という言葉で束ねても、提出先まで一つにはならない。

相続取得57.9%と死亡58.3%は、同じ分母ではない

国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」では、調査対象空き家全体の取得方法で「相続」が57.9%だった。別の集計では、相続空き家が空き家になった原因の「死亡」が58.3%だった。調査基準日は2024年12月1日である。

数値分母示していること
57.9%調査対象となった空き家全体取得方法が「相続」だった割合
58.3%相続で取得した空き家空き家になった原因が「死亡」だった割合

意外なのは、二つの数字が57.9%と58.3%で近いことだ。見た目は似ていても、足したり掛けたりはできない。「空き家の58.3%が死亡で発生した」とも言えない。この資料だけから、墓じまいをした世帯の割合を出すこともできない。国の空き家調査に墓の設問はないからである。

良い点は、空き家の入口が見えることだ。調査対象空き家では、取得方法の半数を超えて相続だった。相続空き家では、死亡が発生原因の半数を超えた。親の死後に家の名義、家財、墓、菩提寺への連絡が同じ家族へ重なる場面を考える根拠にはなる。

ただし、57.9%を「相続した人の57.9%が家を売る」と読み替えてはいけない。調査は空き家の取得経緯を示したもので、売却の意思や時期を決める数字ではない。

私はこの数字を、売るよう迫る材料ではなく、家と墓の連絡先を早めに書き出す理由として読む。

良い点は一度に調べられること。注文は予定表を一列にしないこと

家と墓を同じ日に確認する良さは、相続人の一往復で資料を集められることにある。磐田の実家へ行く日に、登記や固定資産税の書類だけでなく、墓地使用許可証、管理料の案内、寺から届いた封筒も撮影する。家族への連絡も一度で済む。

その上で、私は予定表を一列にしないよう注文を付けたい。「家を査定する→墓じまいを相談する→家財を出す→改葬する→引き渡す」と一直線に並べると、一つ止まっただけで全部が止まったように見える。家と墓は二列に分け、担当者と次の確認日だけを同じ表へ置く。

確認項目実家売却の列墓じまいの列
最初に見る物登記事項証明書、固定資産税の通知、鍵墓地使用許可証、管理料の案内、墓の写真
最初の連絡先不動産会社。名義が未整理なら司法書士墓地管理者または菩提寺
動かしにくい条件買主との引渡日、残置物の条件移転先の受入、法要日、許可手続
未定でよいこと売出価格、売却する月墓石撤去日、移転先の最終決定
今日決めること書類を探す人と査定を聞く日管理者へ電話する人と聞く項目

仮に実家の引渡日が2026年12月10日、菩提寺と相談できる法要日が11月15日、改葬先の受入日が11月25日だとする。家の列には、仏壇の搬出、家財処分、買主との確認期限を置く。墓の列には、墓地管理者の証明、改葬許可、遺骨の移送を置く。両方を12月10日に終わらせる必要はない。11月25日までに墓側が完了しなくても、管理を続ける人と次の連絡日が決まっていれば、家の引渡しとは分けて組み直せる。反対に、家に墓の書類や位牌を残すなら、引渡しだけを先へ進めてはいけない。

磐田市公式ウェブサイトは、市内に遺骨がある改葬について、移し先を決定してから手続を行うと案内している。墓地、埋葬等に関する法律第5条では、改葬の許可は現在遺骨がある地の市町村長が行う。東京の納骨堂へ移す場合でも、現在の墓が磐田市なら許可の入口は磐田市になる。

行政の許可と、墓地を返す条件や法要は別である。申請書だけ先に埋めても、移転先や墓地管理者の証明が整わなければ進まない。

制度上の流れは墓じまいの基礎資料で確かめ、墓地の規則、法要、費用は最後は菩提寺に確認を。

実家では仏壇が別の期限を持つ。引渡日までに家を空にしても、位牌や本尊まで家具と同じ扱いにはできない。搬出日の組み方は仏壇の処分を実家の売却日から逆算する手順に分けた。墓と仏壇の情報欄は、実家カルテに仏壇と墓を残す方法で確認できる。

私は、売るか移すかより先に「未定」を書く

ここからは体験談ではなく、大石浩之(磐田市/不動産業)の意見である。私は、墓じまいと実家売却のどちらを先に決断するかより、二つの欄へ「未定」と書くことを先に勧める。決断を保留することと、確認を放置することは別である。

言い切る。売却するか、墓を移すかを今日決めなくてよい。しかし、家の名義と墓地使用者が誰かは今日から調べられる。「未定」と書けば、決まっていない事実を家族で共有できる。空欄のままでは、兄は弟が進めたと思い、弟は姉が寺へ電話したと思う。止まっている場所さえ分からない。

私にも迷いはある。空き家は保有している間も管理と費用が続く。買いたい人が現れたとき、家族の話し合いを待ってもらえるとは限らない。一方、期限を理由に墓の移転先まで急いで決めれば、後から戻せない選択になることもある。すべてを保留すればよいとは考えていない。

だから、戻せる確認と戻しにくい決断を分ける。書類の撮影、窓口への質問、査定の取得は戻せる。売買契約、墓石撤去、合葬後に遺骨を戻せない施設への納骨は戻しにくい。前者は同時に進め、後者は回答がそろってから家族で決める。これが「まだ決めない自由」を残す線引きである。

今日するのは電話2本と書類4点の確認

磐田の空き家と遠方の墓を同時に整理する相続人が、2026年9月9日にできることは、電話2本と書類4点の確認である。売却契約も墓じまいの申込みも、今日の作業には入れない。次の判断に必要な空欄を見つける。

  1. 書類4点を探す。家の登記事項証明書、固定資産税の通知、墓地使用許可証、墓地管理料の案内である。見つからない物は「なし」ではなく「未確認」と記録する。
  2. 墓地管理者か菩提寺へ電話する。「墓地使用者は亡くなった親の名義か」「遺骨は何体か」「承継と改葬に要る書類は何か」「移転先が未定でも相談できるか」を、この順で聞く。回答日と担当者名も残す。
  3. 不動産会社へ電話する。家の現在名義、残っている家財と仏壇、売却時期が未定であることを伝える。「査定前にそろえる資料」「売却を決めた場合に引渡しまで必要な期間」を聞く。名義の個別判断は司法書士へつなぐ。
  4. 二列の表へ次の確認日を書く。家族会議の日ではなく、足りない回答を取りに行く日を置く。電話できない家族には、書類の写真を共有する役を頼む。

紙一枚で共有するなら、実家カルテに家、登記書類、仏壇、墓、菩提寺の連絡先を入れられる。遠方の墓を次に見に行く日が決まっていなくても、墓地名と管理者の電話番号が埋まれば一歩進んでいる。

私はこう案内している。墓じまいと実家売却は、先後を一つに決めるのではなく、確認を同時に始める。実行は、動かせない期限と戻しにくさを比べて決める。売るか残すか、移すか継ぐかは、二列の回答がそろうまで保留してよい。相続登記と契約は司法書士・不動産会社へ、改葬の行政手続は現在の墓がある市町村へ、墓地の規則、法要、費用は最後は菩提寺に確認を。

FAQ

よくある確認

墓じまいが終わる前に、実家の査定や売却活動を始めてもよいですか。

査定や資料集めは、墓じまいの完了を待たずに始められます。ただし、売買契約や引渡しとは分けて考えます。仏壇、墓地使用許可証、寺からの書類を家に残すなら、誰がいつ運び出すかを先に決めます。名義や契約は司法書士・不動産会社へ、作法と費用は最後は菩提寺に確認を。

実家の引渡日が先に決まり、墓じまいが間に合わないときはどうしますか。

家の引渡日と墓じまいの日を同日にする決まりはありません。墓の管理を続ける人、書類の保管先、次に菩提寺へ連絡する日を決め、家の残置物だけを引渡条件に合わせます。契約上の扱いは不動産会社へ、改葬手続は現在の墓がある市町村へ、法要と費用は最後は菩提寺に確認を。

遠方の墓について、最初に誰へ何を聞けばよいですか。

墓地管理者か菩提寺へ、墓地使用者の名義、納められている遺骨の数、承継・改葬に要る書類、次回の管理料、移転先が未定でも相談できるかを聞きます。電話では結論を出さず、回答と担当者名を記録します。行政手続は墓のある市町村へ、作法と費用は最後は菩提寺に確認を。

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Sources

出典・確認先

  1. 参考 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」

    調査基準日2024年12月1日。調査対象空き家全体の取得方法で相続57.9%、相続空き家を分母とする発生原因で死亡58.3%を確認。PDFに公表日の記載なし。HTTP 200。2026年9月確認

  2. 参考 磐田市公式ウェブサイト「市営墓地」

    2026年8月4日更新。改葬は移し先を決定してからの手続であること、改葬許可申請の案内と市の担当窓口を確認。HTTP 200。2026年9月確認

  3. 参考 e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」

    第5条第1項の改葬に市町村長の許可が要ること、第5条第2項の許可権者が遺骨の現に存する地の市町村長であることを確認。HTTP 200。2026年9月確認

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と菩提寺にご確認ください。 本記事は一般的な情報であり、特定の寺院・家・土地についての判断ではありません。

大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)の顔写真

この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。菩提寺や墓の話は、家をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。 その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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